元はドリームキャストマガジンに掲載された短編小説ですが、ここで紹介するのは、一週遅れでサイトに掲載されたものです。
より、ぷよぷよ~んでの新キャラ・チコのバックグラウンドを理解し、キャラクターを好きになれる、そんな小説でした。
1~2分で読み終わる程度の、ほんの短編ですが、豪華なことに、毎回書下ろしの挿絵がついていました。
全12話で、基本的には読みきりです。
一話一話は短いものですが、すべて紹介しようとするとある程度長くなるため、二回に分けて紹介します。
当時は我が家にはネットがなく、父が会社で印刷して持ち帰ってきてくれたものなのですが、当時は会社が用紙の節約をうたっていたために裏面がよくわからないプログラムの仕様書みたいなのが印刷されており、あまり小説の挿絵なども綺麗に見れないのですが…
あとそもそもプリンタの印刷設定のせいか、挿絵に線が出ちゃってあんまりきれいに印刷されていないんですよね…。今更言ってもどうにもならないですけど。
全文掲載すると引用の域を超えてしまうため、あらすじのみ紹介したいと思います。
作者はかむきひ氏、挿絵は戸部淑氏です。
◆フクロイヌの月 12日
突如目の前に広がった色とりどりの風船…こんな風景を見るのは初めてで、私はそれをしばらく眺めていた。
ところが突然、私を呼ぶ声でふっと振り向いたら、おばあさまがコワイ顔で立っていて、もう風船も消えていた。巫女になるための勉強の途中に、私は居眠りをして夢を見ていたみたい。
実は昨日、カガミネコという、人に未来を見せるという不思議な猫が部屋に入ってきて夜更かししちゃったから…、それで私は居眠りしちゃったのね。
お勉強は嫌いじゃないけれど、おばあさまがあんまりにも叱るものだから「眠くなるのは自然のセツリだわ」と覚えたての言葉で反論したら、おばあさまは呆れちゃったみたい。
…きっとあの風船は、カガミネコが見せてくれた未来なんじゃないかって、私思うの。
◆久しぶりの晴れの日に
この数日間はとても大きな嵐で何日も外に出られなくて最悪だったの。
それをいいことに、おばあさまったらいつもより長く勉強させるんだもの…。こうお勉強ばかりじゃやる気もなくなっちゃうわよね。
でも昨日、お勉強の最後におばあさまが話してくれたことは、ちょっとだけわくわくした。
7年に1度の大きな嵐(昨日まで続いていたのがそれね)は、はるか遠い東の大陸から、様々な「来訪者」を運んできてくれるというの。
嵐も止んで、私は数日ぶりに外に出かける。気分をスッキリさせるためには、丘の上の神殿跡へと出かけるのが一番!
雨が上がった後の草原はいつもに増して緑が取っても綺麗…
そんなとき、緑色の絨毯の上に黄色の羽を見つけた。羽根のように見えるそれは、何かの種だった。これがおばあさまの話してくれた「来訪者」なのね。
そう思えば、昨日までの嵐もちょっとだけ好きになれた気がしたの。
◆期末?試験大作戦
今日は日ごろのお勉強の成果を試す試験の日だった。
普段はカッコイイ魔法なんて教えて貰えないけれど、きちんと基礎を身につけているって試験で示せば、それなりに威力のある魔法も教えて貰ることになっている。
今日の試験の結果は何とかOK、稲妻を呼ぶ魔法を教えて貰えることになった。
最初っから上手く行くわけもないんだけど、あんまりにもできないから、おばあさまが重い腰を上げてきた。
呪文はその意味をしっかり考えて唱えなければいけない。おばあさまはしつこく言うけど、私だってそんなのわかってるわ!
でもどうしてもできないから、おばあさまの後に続いて呪文を唱える。
「太古の神よ…」
「太鼓の神よ…」
やっぱり雷様と言えば太鼓よね…って、あれれ?
◆新しい友達
今日は新しい家族が出来た記念すべき日だった。
トドリの木の実のような綺麗な黄色い体に、ちっちゃい角と翼を付けたドラゴンさん。体は私なんかよりずっと大きいけれど、まだまだ子供なんだろう、背中についてる翼も小さいし、本当に飛べるのかなってくらい。
ドラゴンは本来は人目につかない場所に住んでいるけれど、私がドラゴンさんに会ったのはいつも遊んでいる森のはずれ。
初めて見たドラゴンさんにはびっくりしたけど、それよりもびっくりしたのは、ドラゴンさんの見つめる先に、空に大きな島みたいなモノが浮かんでいたこと。
ドラゴンさんの青い目が何となく泣いているように見えて、彼はあの島から帰れなくなってしまったんだって気付いた。だから私は、ウチにおいでって誘ったの。ドラゴンさんがあそこまで飛んで帰れるようになるまで。
◆道草のススメ
きょうは、おばあさまに頼まれて薬草を摘みに行ってきた。
薬草は薬だけじゃなくて、お料理に使うことも多い。体にもいいし、ちょっとした隠し味にもなる。特にこの雪解けの季節にしか取れない薬草は、香りもよくて私も大好き。
だから、いつもなら面倒だと思うお使いも、今日は頑張りがいがあった。
お目当ての薬草は高い山に生えてるけれど、薬草が取れるのは低い場所だから大丈夫。
おばあさまに「今年はひとりで行けるかい?」って聞かれたから「うん」って答えた。私だっていつまでもコドモじゃないし、おばあさまはもう山登りはたいへんだろうしね。
薬草が採れるのは、雪の残る山の北側。雪の積もらない南側には危ないから言っちゃダメって言われているけれど、ダメって言われると余計に行ってみたくなるものよね。
薬草を採った後に、山の南側に回ってみた。道がごつごつして確かに怖かったけれど、景色が綺麗で…、すぐ近くをたくさんの鳥が通り過ぎて行った…。…言いつけもたまには破って見るものね。
帰りが遅くなったから、道草がばれて叱られたけれど、おばあさまはいつもより怒ってないみたいに見えた。
◆夜の森の精霊
今日は森の向こうに住むおばさんの家までおつかいに行った。
おばさんの家は遠いけれど、おばさんの焼くパイは美味しいからとても楽しみ。
今日のパイもとても美味しかったけれど、ちょっと帰りが遅くなってしまって、いつも遊んでいる森だけど、暗くなってから通るのは少し怖かった。
突然ゴソゴソと音がして、どきっとした。「夜の森の精霊たちは臆病な心を見つけるといたずらするんだよ」っておばあさまの言葉を思い出した。だから急いで帰ろうと思ったのだけど、なじみの森なのに迷ってしまって…これが精霊のいたずらなのかしら。
家に帰れなくてどうしようと思っていると、草むらからぼんやりとした光が飛んできた。ホタルより少し大きいそれは、誘うように飛んでいるので、あとをついていくと、家の灯りが見えてきてほっとしたわ。あれはきっと親切な精霊さんね、ありがとう。
*画像はすべてコンパイル「チコの日記 もうひとつのぷよぷよ~ん」より
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