その朝も、朔とその同居人・深瀬との、何の変哲もない平和な時間が流れていた。
もし、わずかに違和感があったとすれば、珍しく深瀬が早起きをした、というだけ。
――だが、異変は突然訪れる。
深瀬が僅かに言いよどむような様子を見せたと思ったら、いきなり自身の首にナイフを当てて掻っ切ったのであった。
混乱する朔だったが、まるで何事もなかったかのように扉が開く。
そこには当たり前のように、生きた深瀬が立っていた…
深瀬は、死を何度も繰り返す。
そして、何事もなかったかのように戻ることも、何度も繰り返す…
主人公は朔ではあり、物語は彼の視点で進みますが、テキストは三人称で書かれています。
こうしたスタイルのノベルゲームにしてはやや珍しいですね。
ゲームの紹介分にあるように、どこか凍てつく氷のような冷たさを感じる文章になっており、ゲームの雰囲気そのものが、テキストに体現されているかのよう。
死んで、だけど自分の前に戻ってきた深瀬。
「今のは夢だった」そう、強く言い聞かせる朔。
だけど… あまりにもリアルすぎる夢だった――
「好きな物全部混ぜたら最強でしょ!?」
無邪気すぎる深瀬と、そこに困惑する朔。
これ、めちゃめちゃほのぼのする展開なんだよなあ…
この直前には、好きなものに対するこだわりが強い深瀬の一面が垣間見れるのもあって、プレイヤーも呆れつつも「深瀬らしい」と納得してしまうようなやり取りなのですが。
一見シュールでほのぼのするだけのやり取り。
でも、このゲームのキャプション、紹介文、そしてなにより先ほどの「不穏な夢」。
それを考えると――どう考えてもほのぼのしている場合じゃない。
どこまでが本物で、どこからが偽物なのか?
自分の首をナイフで切る深瀬。
目の前で深瀬が、深瀬に殺される。
どうあっても、深瀬の死からは逃れられないのか?
繰り返される死に憔悴しきった朔は、鏡の中の自分を見つめ「まるで俺のほうが死んでいるみたいだな」と嘯く。
そして、もう終わりを選ぼうとする深瀬。
「一緒に死んでほしい」と願う深瀬。
朔はどういった答えを告げるのか。
――正直、これは少しもやもやする終わり方ではあります。
このゲームの謎の「真実」ははっきりとした形では明示されず、端々から推測するしかない。
だけど、このゲームが「本物じゃないかもしれない存在を受け入れる or 拒絶する」というテーマであると推測すれば、重要なのは謎の真実なんてものよりも、朔の選択と二人の終わり方そのもの、なのかもしれません。
何が本物なのか。
偽物は本物足り得るのか。
このゲームは、そんなテーマをプレイヤーに問いかけてくるのです。
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スマホを含むブラウザのほか、WindowsでDLプレイも可能です。
*画像はから²さま「再三再四」より

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